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聞こえない世界 伝え20年 映画監督・今村さん自伝を出版(中日新聞さん2019.8.23朝刊)

中日新聞さん朝刊(愛知)県内版2019年8月23日金曜

聞こえない世界 伝え20年
映画監督・今村さん自伝を出版

初の自伝を出版した今村さん(左)と編集者の江草さん(右)=緑区大高町のStudio AYAで
 東日本大震災の被災者を取材した映画「架け橋 きこえなかった3・11」などで知られる映画監督今村彩子さん(40)=名古屋市緑区=が、自伝「スタートラインに続く日々」(桜山社)を今月、出版した。「ろう者の日常生活や考えていることを伝えていこう」とカメラを回し続けて二十年。作品制作に懸ける思いや、「耳が聞こえない=かわいそう」とみられることへの葛藤がありのままにつづられている。 (松野穂波)
 今村さんは生まれつき耳が聞こえないが、唇の動きを読んで会話できる。愛知教育大時代に渡米して映画製作を学び、二十歳でドキュメンタリーを撮り始めた。これまでに、自転車で日本を縦断した自身の旅の記録「Start Line(スタートライン)」や、性的少数者(LGBT)のろう・難聴者を取材した「11歳の君へ」などの映画が公開されている。
 自伝は、桜山社代表の江草三四朗さん(40)=同市瑞穂区=から提案され、一年半かけて執筆。手掛けた作品を軸に、コミュニケーションや「聞こえないこと」への思いを記した。
 会話の輪の中でついていけずに孤独感を抱き「聞こえない私なんかいない方がいい」と思うこともあったと吐露、二〇一五年夏のスタートライン撮影中、言葉や耳の壁を越えて他者とうち解けるろうのオーストラリア人男性と出会い、「可能性を狭めていたのは『聞こえない耳』ではなく、『耳が聞こえないから』と言い訳する自分の心だ」と気付いたと明かしている。 子どものころから、字幕付きの洋画に親しんだのをきっかけに映画監督を目指したことも記述。一方で、いぼ治療の痛みにもだえたり、車いす利用者との旅行で車いすを押すべきか悩んだりなど、映画監督の立場を離れた姿にも触れた。
 今村さんは「映画監督や聞こえない人という皮をむいた私は、みんなと同じように泣いたり笑ったりする。生き方に悩んでいる人に手に取ってほしい」と話す。
 四六判三百二十八ページ、千五百円(税抜き)。全国の書店で販売中。十月十日に同市中村区のシネマスコーレで、スタートラインの上映会と自伝のサイン会を予定している。問桜山社=052(853)5678


  註:連絡先メールアドレスについては名古屋の出版社「桜山社」の公式サイトを参照。